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『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』 2月度

22.08.25

人生で真剣勝負した人の言葉は詩人の言葉のように光る

「生き方の教科書」2月度の私の心を熱く燃やした3名の言葉を紹介させて
いただきます。

1.一ミリの努力、一秒の努力の積み重ね
井村雅代 アーティスティックスイミング日本代表ヘッドコーチ

オリンピック本番の一か月前には、過労を防ぐために練習量をうんと
減らすんですが、それまではとにかく選手たちを練習漬けにしました。
一般の人は一週間に五日、六日働いて休みますが、下手な選手は他の
人と同じように休んではダメです。上手な人が寝ている間も練習する
以外に上手になる方法はないんです。だから彼女たちには八日から
十日に一日休ませました。十日に一日の時はさすがの私も辛かったです。
選手たちはもっともっと辛かったと思います。私たちはそういう練習を
してきたんです。

私が練習中に最も使った言葉は「無理をしなさい」という言葉でした。いまの日本の
企業で「無理をしなさい」って言ったら大変なことになるようですが、そんなことを
言っている場合じゃないんです。下手な子は無理をする以外に強くする方法なんか
ありません。「無理をしなさい」「力を出しなさい」これはいまも私が一番使っている
言葉です。彼女たちには何とか私の思いを分かってもらおうと思ってたくさんの話しを
しました。プールサイドのホワイトボードに言葉を書いては消し、書いては消して
話しを聞かせました。例えば「練習は噓をつかない」「自分の可能性はこんなもんだろうと
小さく見積もりがちだけれど、他人はもっと高く評価してくれている。だから自分はもっと
できるんだ、可能性があるんだと言いました。

「頑張って当たり前」どんな質の頑張りをするかによって結果は変わるのです。
それから「心技体」の話もしました。スポーツでは心技体の三つを揃えようとしますが、
心技体なんか滅多に揃いません。だから、きょうの自分には何が欠けているか自分と
語り合いなさい。そして他の二つでそれを補いなさいと言いました。「私はもう限界です」
と言う選手には、「限界ってどこにあるの?指さしてごらん」と言うと、はたと
気がつきます。限界を決めているのは自分。限界なんてありません。「一ミリの努力」
という話もしました。きょう垂直飛びで四十センチ跳べた選手に、いきなり
五十センチ跳びなさいと言ったらハードルが高いと思うんですね。そこで、
あなたは明日四十センチと一ミリ跳びなさいと目標を設定してあげる。たった一ミリ
だったら、跳ぶ自身はあります。目標を達成する達成感と喜びも得られます。次の日には
さらにもう一ミリ高く目標を設定してあげる。それを続けることによって、
三か月と十日後には五十センチ跳べるようになっているんです。

オリンピックに出てメダルを取る。そういう大きな目標は持たなくてはなりません。
けれどももう一つ日々の目標がいるんです。日々の目標とは、一歩前への努力で
叶えられる目標。そんな小さな目標にも、大きな目標と同じだけの価値があるという
話を選手たちにしました。毎日毎日進化していくことが大事なんだ、一ミリの努力、
一秒の努力の積み重ねが大事なんだと繰り返し言って聞かせました。選手たちも、
「一日一ミリだけ、一歩だけ前へ行けばいいんですね。それなら私たちにもできます」
と理解してくれました。


井村ヘッドコーチが下手な子に言った
「無理をしなさい」「力を出しなさい」という言葉はいまの日本の企業ではNGかもしれませんが、
オリンピック選手に限らずどのような分野でもその道で一流を目指すなら、当たり前のことでは
ないかと思います。
そして「私はもう限界です」と言う選手に「限界ってどこにあるの?指さしてごらん」と言って
限界を決めているのは自分自身だということを気づかせ、「一ミリの努力」を目標設定してあげる
お話しにはとても考えさせられました。




2.文句を言う暇があったら勉強しろ
田中健一 東レインターナショナル元社長

私に目覚めるきっかけを与えてくださったのが、二十代後半に仕えた十歳年上の
課長であった。しばしば酒にも付き合わされ、怪気炎を上げる彼の姿を当時の
私は側でうんざりしながら見ていた。何か凄いお話をされていることは感じて
いたが、それをキャッチできるだけの問題意識がなかったのである。あの時の
お話しを少しでもメモしておけば、いまどれほど役立っただろうかと悔やまれて
ならない。それほど才気溢れる方だった。

ある日、その課長の自宅にお邪魔して飲んでいた時、私は「いつ営業に出して
くれるんですか」とつい愚痴をこぼした。すると彼は、ガラガラっと傍らの
押入れの戸を開き、置かれていた木箱を開けて見せてくれた。木箱の中には
びっしりとノートが詰め込まれており、その数は恐らく百冊はくだらなかった
であろう。

「お前は俺がいつも大ボラ吹いていると思っているだろう。しかし俺の話は
こういうものに裏付けられているんだ」
促されて開いてみると、まず課長自ら描いた紡績機の設計図が目に飛び込んできた。
そればかりではない、化学から経済まで、あらゆる分野についての図や数字が
びっしりと書き込まれており、彼がこれまでどれほど勉強を重ねてきたかが
ひと目で分かった。私は雷に打たれたようなショックを受けた。

課長は私におっしゃった。

「いいか、自分たちがつくったものが、どこへ売られて何に変わり、最終的にどういう
形で消費されるのか。そこにそれぞれどんな問題があるのか、分からなければ商売は
できない。文句を言う暇があったら勉強しろ」


酔いは一瞬で覚めた。
あの時目覚めたおかげで、私は他社との交渉の際、例えば原料が足りないという話に
なった時など、どのくらい原料があればどれだけ製品をつくれるか、その場でさっと
化学式を描いて計算することができる。相手も本気になって考えてくれるから、話が
実質的に進むようになる。

二十代の終わりにニューヨーク勤務になった時も、まだ1ドル=360円で日本品が
コスト競争力があった上に、私が商談で細かいことまで即答して先方の必要性に
具体的に対応できることが評価され、面白いようにお客様が増えた。日本の工場で
アメリカ向けに生産される製品の半分くらいを出していたほどで、会社での評価云々
よりも、とにかく商売が面白くて、面白くて、一心不乱に働いた。


当社が2年前から名古屋大学のベンチャー企業と共に開発を進めております
「血管内皮機能」をチェックする装置には、下記の機能があります。

①血管の平滑筋の緊張と弛緩をエラスチン特性(しなやかさ)とコラーゲン特性
(強靭さ)と共に血管容量をグラフ化する。

➁体積弾性率(血管の硬さの指針)を0~100%で表示する

➂拡張率(平滑筋の拡張能)を%で表示する

④閉口カフ圧と開放カフ圧を表示する。

それらを測定するだけでなく血管内皮機能を改善する装置も同時に開発を進めておりますが、
測定結果に基づきどのようにアドバイスするかの判断がとても重要になってきます。
田中さんの上司の課長さんではありませんが、当社の品質保証部長が長年種々の治療装置の
作用機序について勉強してきたお陰で血管内皮機能の改善に的確なアドバイスが出来るように
なりました。当社は常にオンリーワン・ナンバーワンの器械の開発を目指しております。
「血管内皮機能」測定システムの普及に役立つ知識をもっと勉強して的確なアドバイスを
するだけでなく、それらの貴重なデーターを共有化するシステムの構築も同時に進めて
まいりたいと思っております。



3.理不尽を吞み込む力
藤元聡一 東福岡高等学校バレーボール部監督

赴任当時の東福岡は県大会はおろか、地区大会で1~2回戦の状況でしたので、
失うものは何もありませんでした。なおかつ41校不合格通知をもらった後の
念願の高校バレーボールの指導者だったので、とにかく恩返しのつもりで
練習、練習、また練習の毎日でした。夜9時に体育館の電気が消えた後も、
外のグラウンドに車を持ってきてライトをアップにして練習していました。
当時、短時間の集中練習のほうが効果的という流れがありましたが、
僕は百本の集中より千本やった方が勝つと自分に言い聞かせて練習量で
勝負しました。これは26歳とまだ若かったからできたことかもしれません。

科学的といわれるいろいろな練習法を取り入れながら、飽きないように
練習を工夫することも大切ですが、飽きるほどの練習を飽きない心でやり抜く、
ということのほうが、もっと大切だと身をもって学び、僕なりのスタイルが
確立されていきました。

最初の頃、あまりの厳しさに35人ほどいた部員が5人まで減ったことがあります。
それでも残った選手たちは必死でついてきてくれましたね。最初は地区1回戦で
敗退していたのが地区のベスト8に残るようになり、次の代は県のベスト4に入りと、
監督3年目には全国大会に初出場できたんです。

苦しい時ほど人間の本性が出るという話は本当ですね。僕はこれを性根(しょうね)と
言っているのですが、苦しい場面に出くわした時に、逃げる者、投げ出す者、噓をつく者、
人のせいにする者、グッと堪える者、いろいろですが、グッと堪えながらも周囲に対する
慮りができてこそ周囲を感化できるし、そういう立ち居振る舞いができる人間を中心に
チームの絆が生まれてくるように思うんです。僕は練習を通してこの積極的忍耐心を
育てることをとても大切にしているのですが、そのために僕自身がトラブルメーカーと
なって部員の前に壁としてたちはだかっていきます。

人間は自分の理解を超えると理不尽に感じるものだと思います。また、人は“頭で理解”し、
“心で納得”するものだとも思っています。例えば練習中、何を言われているのか頭では
理解できるけど何となく腑に落ちない、納得できないという子がいるとしますよね。
逆に頭ではよく分からないけど、おやじの言うことだからやるしかないかと自分に言い聞かせて
やりきる子がいます。どちらの子が最終的に伸びるかというと間違いなく後者なんです。

この“理不尽を吞み込む力”も非常に大事な力の一つと考えています。なので僕は苦しい場面を
つくる時、あえて言葉で説明することはしません。苦しい場面を乗り越えるのに言葉で多く説明して
あげないといけない選手は、心の距離が遠い子であるように思います。

それはバレーボールに限ったことではないと思います。社会の大海原に出ると、
学生時代とは比べものにならないくらいの厳しさ、理不尽な出来事が待ち受けています。
その意味でも僕のスタイルはそのためのよきリハーサルになるのではないかと考えているんです。



苦しい場面に出くわした時出る本性(性根)としては、①逃げる者、➁投げ出す者、➂噓をつく者、
④人のせいにする者、➄グッと堪える者、いろいろだそうですが、練習中に何を言われているのかは
頭では理解できるけど何となく腑に落ちない、納得できない子より、頭ではよく分からないけど、
おやじの言うことだからやるしかないと自分に言い聞かせてやりきる子のほうが最終的に伸びる
という藤元監督のお話しで、常々頭で理解して心で納得する事が大切だと考えていた私は、
社会の大海原を乗り切るためには「理不尽を吞み込む力」も非常に大事な力になる事を学ばさせていただきました。