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月刊「致知」巻頭の言葉 7月号より

21.07.02

2年目に突入したコロナインフォデミックの中、メディアの偏った情報に惑わされることなく、
強い知性を持ち続ける困難さを感じる日々が続く中で、
私の心に強く響いた、JFEホールディングス名誉顧問數土(すど)文夫(ふみお)様の「巻頭の言葉」を
ご紹介させて頂きます。



四維張らざれば 国すなわち滅亡す 「史記」管晏列伝




※旺盛なエネルギーを失った日本人

この頃、日本人から旺盛なエネルギーが感じられなくなったことに、私は強い危機感を抱いています。
それは必ずしも、長引くコロナ禍のせいばかりとも思えません。
「ジャパン アズ ナンバーワン」で知られる社会学者エズラ・ヴォーゲルは、敗戦から僅かな期間で
奇跡的な復興を果たし、世界第二位の経済大国に上り詰めた日本を研究し、勤勉で忠誠心が高いこと、
好学心に富み学習意欲が高いこと、算数や理科が得意であることなどの特徴を紹介しました。
同書が出版されたのは、いまから四十年以上前。
躍進を続ける日本のよさを分析し、自国アメリカに教訓をもたらそうと考えたヴォーゲルの姿勢には
感服させられます。



※民の安定こそ国家繁栄の礎と考えた管仲

さらに時代を遡り、先賢の英知に照らして現状打開のヒントを探ってみましょう


いまから二千五百年以上前の中国春秋時代、斉の桓公に仕え、四十年以上にわたり宰相の任を務め、
弱小であった同国を中原の覇者へと導いたのが管仲(管子)です。

列強が覇を競い合っていた当時は、民衆から可能な限り搾取し、軍備の充実を図るのが常識でした。
これに対して管仲は、民の生活を充実させることこそが国の繁栄につ繋がると考え、経済重視策、
まさに「経世済民」を実践し、見事にその理想を実現したのです。

古代中国の思想家たちが対象としたのは支配階級であり、一般大衆は彼らの思慮の対象外でした。
管仲がそうした高邁で抽象的な思想家たちと大きく異なるのは、国家最高の実務家でありながら、
民の安定こそ国の発展の礎(いしずえ)と考えていたことです。政治家として破格の人物であった所似です。


※組織や個人の支えとなる四本の綱

しかし、管仲は単に経済政策ばかりに没頭し、それを政治の目標としていたわけではありません。
これらはあくまで手段で、目的はそれによって倫理・道徳意識の高い国家・世界を構築することでした。
管仲は、次のように説いています。

「国に四維あり。一維絶ゆれば則(すなわ)ち傾き
二維絶ゆれば則ち危うく、三維絶ゆれば則ち覆り、
四維絶ゆれば則ち滅ぶ」
「何を四維と謂う。一に曰(いわ)く礼、二に曰(いわ)く義、三に曰(いわ)く廉、四に曰(いわ)く恥」
(『管子』牧民編)

四維とは国を四方から引っ張って支える四本の綱であり、これを失えば国が滅ぶと説いています。
そして礼・義・廉・恥の四本の綱について次のように解説しています。

第一の礼は、
節度を守ること。富や権力を独占し、貧者に思いを致さなければこれを失います。

第二の義は、
自己宣伝をしないこと。「義を見てせざるは勇なきなり」ですが、正義を行うことは
当然であり、ことさらに自慢する事ではないのです。

第三の廉は、
自分の過ちを隠さないこと。企業も自社の不正を隠すようでは先がありません。

第四の恥は、
他人の悪事に引きずられないこと。
コロナ補助金の不正受給や、検事と新聞記者による賭博事件、振り込め詐欺などは、
まさしくその典型例といえます。

日本の安岡正篤師も戦後の指導者に対して強く訴えています。
名だたる先賢たちが、国家(組織)の繁栄には忠孝よりも四維がより重要であると
説いていることは刮目(かつもく)に値します。


そして国家ばかりではなく、地域も企業も個人も、四維の有無が盛衰を決めることを
心に刻まなければなりません。人類はいま、格差の拡大や気候変動など、世界の存亡に関わる
諸問題に直面しています。その一方で、AIやロボットなど、人知を越えるスピードで進化し続ける
科学技術に翻弄されています。盛衰の岐路に立ついまこそ、私たちは礼・義・廉・恥に代表される
人間の倫理・道徳に立ち返ることが重要であると私は考えます。
月刊「致知」7月号より

「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業と投資家のみならず、
国民に正しい情報を伝える勇気もなく、
ただ保身に走る政府と地方自治体のトップとそれを支える官僚。
そして、それらを戒めるどころか、偏った情報だけを発信して、
さらにコロナ禍を煽るメディアと、それらに結託した学者など、
「悪魔に魂を売った」勢力に操られて、世界を滅亡させない為に、
數土文夫様の言葉

※国家ばかりではなく、地域も企業も個人も、
四維の有無が盛衰を決めることを
心に刻まなければなりません。