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人の成長のために働かないかぎり、自ら成長することはない

19.02.06

人の成長のために働かないかぎり、自ら成長することはない 
ピーター・ドラッカー

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愛読している月刊誌にドラッカーの教えが連載されることになりましたので、
その一部を紹介させて頂きます。

--- 組織は人を成長させる道具である ---

ドラッカーの思想の原点にあるのは「世のため人のため」という一言です。
この言葉には、組織という社会的道具の二つの目的が込められています。

組織の目的の第一は、世の中の人に喜ばれること。
具体的には魅力的な製品やサービスを提供することでお客様に満足してもらうことです。

目的の第二は、組織で働く人を成長させることです。
その実現のための基本的な心構えが、人の成長のために働くことです。
両者は相互補完的です。魅力的な製品やサービスを提供するための仕事をとおして
人は成長するということです。


「組織に働く者が成長するとき、組織はさらに多くをなしとげる。
しかも、組織が真剣さ、真摯さ、意識、能力において成長するほど
そこで働く者が人として成長する」
『変貌する産業社会』


誰もが組織の成長を願います。しかしそこに働く者の成長を真に願っている者は
どれだけいるでしょうか。組織の成長を願うならば、そこで働く者の成長に目を向け、
その手助けをしたいものです。

--- 成長とは自らの強みを生かすことである ---

では、私たち組織で働く者は、自他の成長のために、どのような姿勢で臨めばよいのでしょうか。
「おのれより優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」
アメリカの鉄鋼王といわれたアンドリュー・カーネギーの墓碑に刻まれた言葉です。
自社の繁栄と自己の成長は、部下の成長とともにあることを示しています。

「部下が・・・」と嘆くときこそ、心の底からその部下の成長を問い、
真摯に向き合うべきではないでしょうか。それは自分の成長の機会に他ならないのですから。


「成長は、常に自己啓発によって行われる。
企業が人の成長を請け負うなどいうことは法螺にすぎない」
『マネジメント』

人材育成とは人を育てることではなく、人が育つ土壌を作ることです。
結局、人は自らの力で自らを成長させるしかないのです。
自ら火を灯し、社会の一隅を照らすのは自らの覚悟しだいです。
ここに人の成長のために働くことの原点があります。


「自らの成長のために最も優先すべきは、卓越性の追求である」『非営利組織の経営』

人は持っているものでしか組織に貢献することはできません。
弱みや不得意なものでは、何ごとも成しとげることはできません。
強みや得意なことが一灯の火となるのです。

成長とは、自らの強みを仕事で発揮し、日々実践で磨くことです。
積み上がった実践量はあるとき仕事の質を変えます。
そのとき多くの人が「あのひとは・・・」と言うようになるでしょう。
卓越性が認められた瞬間です。自信がますます成長を促進させます。
自信は自惚れとは異なります。自己確信です。
上にある者の役割は、部下の美点を観て、伸ばすことだといえます。



--- 真の成長は人として大きくなることである。 ---


人は、仕事をとおして自らの強みを生かし、スキルを高めると同時に、
人とともに仕事をすることで人間性を鍛え、自らの人格を高め深めていきます。
そしてその自分をもって人の役に立つことを学んでいきます。それが成長です。

現代は組織社会です。一人で世の中の役に立つのではなく、
組織の使命(ミッション)の実現を目指してその一隅で仕事をし、同時に責任を果たすのです。

お客様に対する責任、ともに働く者に対する責任、会社に託されたお金に対する責任・・・
責任には種々ありますが、どの責任も人間の器を鍛え、成長させてくれるものです。

組織で人と働くということは、成長する環境に自らを置くことです。
組織は、人類が考案した社会的な道具です。組織に使われるのではなく、
道具として自らの成長のために使いこなしていきたいものです。

月刊「致知」2月号『仕事と人生に生かすドラッカーの教え』より